創作をするにあたり、モチベーションを保つことを目的として。
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「どうするの、父さん」
「これは、異例のことだ。今まで我がスリンクス家の中で、あんな強大な魔力を持つ子は生まれたことがない。いや、ほんの少しの魔力を持つものでさえ、生まれるのは稀なことだ。……それが何故、ラウィスのような……」
「母さんにも魔力はなかったんでしょう?」
「そうだ。だから、生まれるはずは無いのだ……あんな恐ろしい魔力を持った子供は」
(……?)
どくん、と心臓が重く鳴った。
二人は難しいことを話している。意味が、よくわからない。
「これは、異例のことだ。今まで我がスリンクス家の中で、あんな強大な魔力を持つ子は生まれたことがない。いや、ほんの少しの魔力を持つものでさえ、生まれるのは稀なことだ。……それが何故、ラウィスのような……」
「母さんにも魔力はなかったんでしょう?」
「そうだ。だから、生まれるはずは無いのだ……あんな恐ろしい魔力を持った子供は」
(……?)
どくん、と心臓が重く鳴った。
二人は難しいことを話している。意味が、よくわからない。
「あいつが魔力なんて生まれてこなければ、母さんは死なずにすんだんだ。あいつが、魔力で母さんを殺した!」
憎々しげな兄の声に、びくっとラウィスの身体は硬直した。――きっと僕には意味のわからない、難しいことを話しているんだ。わからないことなんだ。
「我が家に生まれてきてはならなかった子だ。ラウィスの、あれの強大な力は、すぐに私やお前たちを脅かすことになるだろう」
(生まれてきてはならなかった……僕が父さんと兄さん達を脅かす?)
ああ、いけない。言葉の意味なんて、考えてはいけないのに。だって意味がわからなければ、僕は悲しむことなんてないんだから。
「……あれ程の魔力を使って、将来何を仕出かすかわからない。ひとり力を持つものがあれば、それに他のものは屈服させられてしまうだろう。だからスリンクス家は魔法を排除して繁栄する道を選んできたのだ。しかしそのお蔭で、魔力に対抗する力など、この家にはない……」
父親の声色は、いつも冷静で静かだ。
一体、僕が何をしようというのだろう。僕はただ、父さんや兄さんと仲良く話してみたいだけなのに。――ラウィスは混乱していた。自分は何をしてしまったんだろう。いけないことをしてしまったのなら、謝らなければいけない。……謝らなければ。
「どうするの、父さん」
「………」
兄の問いかけに、父は無言だった。
どくんどくんと、心臓の音が耳元で大きく聞こえた。僕が魔法を使えても、この家に必要な子なんだと言ってくれる。きっと言ってくれる。――ラウィスは祈るような気持ちで言葉の続きを待った。
お願い。
誰に祈っているのか、わからないけれど。それでも。
「子供の今のうちに、始末しちゃったほうがいいんじゃないの。大人になったら、厄介なことになるかもしれない」
お願いします。誰か。
誰か、誰か。これからはもっといい子にしています。もう魔法なんて使いませんから。だから、だからお願い。どうか。
ああ。ああ、神様。
長い長い沈黙に思えた。そして。
「……そうだな」
ぷつりと、糸が切れたように。――頭の中が、真っ白に染まった。
「早めに始末してしまったほうがいいかもしれん。この家の存続と、血統と守るためにも」
言葉は容赦なくラウィスの耳に襲いかかる。カタカタと手が震えた。
「せめて一思いに……」
(何を、言っているの)
頬を伝う、冷たく嫌な汗。顔からは血の気が引き、寒気さえ感じるような気がした。
ただ、訳がわからなかった。
どうしたらいいかわからない。どうしたら、どうしたらいいんだろう。
そうだ、聞かなければいい。耳を塞がなくちゃ。早く耳を。――でも身体が、金縛りにあったように動かない。
(言わないで。言わないで、父さん)
自分の父親が何を言おうとしているのか、わかってしまう。けれどそれを聞いてしまったら、自分はどうすればいい? きっと誰も助けに来てなどくれないのに。
父親は決心したように一息つき、残酷な言葉を口にする。それはラウィスが最も恐れていたこと。
「一思いに、殺してやろう」
(……っ!)
体中に電流が走ったかのように。ずしりと巨大な岩が、心臓を押し潰してしまったかのように。
目の前が真っ暗になる。――僕はもう、駄目なの?
憎々しげな兄の声に、びくっとラウィスの身体は硬直した。――きっと僕には意味のわからない、難しいことを話しているんだ。わからないことなんだ。
「我が家に生まれてきてはならなかった子だ。ラウィスの、あれの強大な力は、すぐに私やお前たちを脅かすことになるだろう」
(生まれてきてはならなかった……僕が父さんと兄さん達を脅かす?)
ああ、いけない。言葉の意味なんて、考えてはいけないのに。だって意味がわからなければ、僕は悲しむことなんてないんだから。
「……あれ程の魔力を使って、将来何を仕出かすかわからない。ひとり力を持つものがあれば、それに他のものは屈服させられてしまうだろう。だからスリンクス家は魔法を排除して繁栄する道を選んできたのだ。しかしそのお蔭で、魔力に対抗する力など、この家にはない……」
父親の声色は、いつも冷静で静かだ。
一体、僕が何をしようというのだろう。僕はただ、父さんや兄さんと仲良く話してみたいだけなのに。――ラウィスは混乱していた。自分は何をしてしまったんだろう。いけないことをしてしまったのなら、謝らなければいけない。……謝らなければ。
「どうするの、父さん」
「………」
兄の問いかけに、父は無言だった。
どくんどくんと、心臓の音が耳元で大きく聞こえた。僕が魔法を使えても、この家に必要な子なんだと言ってくれる。きっと言ってくれる。――ラウィスは祈るような気持ちで言葉の続きを待った。
お願い。
誰に祈っているのか、わからないけれど。それでも。
「子供の今のうちに、始末しちゃったほうがいいんじゃないの。大人になったら、厄介なことになるかもしれない」
お願いします。誰か。
誰か、誰か。これからはもっといい子にしています。もう魔法なんて使いませんから。だから、だからお願い。どうか。
ああ。ああ、神様。
長い長い沈黙に思えた。そして。
「……そうだな」
ぷつりと、糸が切れたように。――頭の中が、真っ白に染まった。
「早めに始末してしまったほうがいいかもしれん。この家の存続と、血統と守るためにも」
言葉は容赦なくラウィスの耳に襲いかかる。カタカタと手が震えた。
「せめて一思いに……」
(何を、言っているの)
頬を伝う、冷たく嫌な汗。顔からは血の気が引き、寒気さえ感じるような気がした。
ただ、訳がわからなかった。
どうしたらいいかわからない。どうしたら、どうしたらいいんだろう。
そうだ、聞かなければいい。耳を塞がなくちゃ。早く耳を。――でも身体が、金縛りにあったように動かない。
(言わないで。言わないで、父さん)
自分の父親が何を言おうとしているのか、わかってしまう。けれどそれを聞いてしまったら、自分はどうすればいい? きっと誰も助けに来てなどくれないのに。
父親は決心したように一息つき、残酷な言葉を口にする。それはラウィスが最も恐れていたこと。
「一思いに、殺してやろう」
(……っ!)
体中に電流が走ったかのように。ずしりと巨大な岩が、心臓を押し潰してしまったかのように。
目の前が真っ暗になる。――僕はもう、駄目なの?
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