創作をするにあたり、モチベーションを保つことを目的として。
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ラウィスが意識を取り戻したのは、空が白み始めた夜明け近くだった。見知らぬ街道脇の木の下で、膝を抱えて眠っていた。
身体を起こすと、両手の平をゆっくりと広げ、その上に恐る恐る視線を落とす。
「……ああ……」
夢じゃない。これは現実なんだ。夢じゃないんだ。
手の平が、乾いて褐色になった血にまみれている。服に視線を移すと、同じように褐色に染まっていた。
はっきりと記憶の中に残されたヴィジョン。血と、焼け焦げる匂い。
「僕が……僕が」
その先は、言葉にならなかった。涙が頬を伝い、あとからあとから流れ落ちていく。
(僕が、殺した)
ありありと脳裏に焼き付いている。もうひとりの自分が、兄の首をはね、父親を消し去ってしまったこと。それを止められなかった自分。泣き叫んでも、何の意味もなかった。
内側から、もうひとりの自分の視界を通じて見ることの出来た恐ろしい場面。――いや、見せられていた?
(悪いのは、僕だ)
もうひとりの自分、“ラウィス”を創りだしてしまったのは、自分自身なのだから。
何で、あんなことになってしまったのだろう? 殺したいと思ったことなんてなかった。そんなこと、思っていなかったんだ。
だけど。
――本当に?
ラウィスは涙で霞んだ視界を、ぼんやりと真正面に向けた。そこには何もない。語りかけてくれるものも、話を聞いてくれるものも。そんなもの、今までだって、何処にもいなかった。
本当に? 本当に?
頭をもたげる、ふつふつと湧いてきた疑問。問いかけの声。
(本当だよ、僕は、殺したいなんて)
否定しようとする自分。悪いのは僕、でもこんなつもりじゃなかった。
――それならどうして、彼らは殺されたの。
いつかきっと上手くいくと思っていた。幸せって感じられる日が来ると思っていた。
だから、ずっと悪い感情を押し殺してきたんだよ。
わかっている。すべてが根本から、狂っていたんだ。
(何で、僕はここに生きているの)
死んでしまいたい。血にまみれた服も、繰り返し脳裏に映し出されるヴィジョンも、すべて捨てて逃げ出したい。
許されるのか? 果たして、それは。
自らの死が、償いになり得るのか? 自分はそんなにも価値のある人間なのだろうか?
自問。――ラウィスは俯き、頭を振った。
(今はまだ生きて、償わなくちゃいけないんだ……)
罪を背負って生き、償いを探さなくてはいけない。死ぬのは、逃避に過ぎないだろう。それに死のうとしたところで、もうひとりの自分がそれを許してくれるはずもない。
常につきまとう、重く苦しい罪悪感。それは当然の報いだ。
(ごめんなさい)
涙がまた、頬を伝っていった。
(ごめんなさい……父さん、皆)
罪深きこの自分を、許してくれなんて、とても言えない。
(ごめんなさい……)
もう戻れない。血のつながった家族は、この世から消えてしまった。
(母さん)
運命は、再び回り始めてしまった。
もう、止まらない。
最後の時まで。
(僕が、殺した)
ありありと脳裏に焼き付いている。もうひとりの自分が、兄の首をはね、父親を消し去ってしまったこと。それを止められなかった自分。泣き叫んでも、何の意味もなかった。
内側から、もうひとりの自分の視界を通じて見ることの出来た恐ろしい場面。――いや、見せられていた?
(悪いのは、僕だ)
もうひとりの自分、“ラウィス”を創りだしてしまったのは、自分自身なのだから。
何で、あんなことになってしまったのだろう? 殺したいと思ったことなんてなかった。そんなこと、思っていなかったんだ。
だけど。
――本当に?
ラウィスは涙で霞んだ視界を、ぼんやりと真正面に向けた。そこには何もない。語りかけてくれるものも、話を聞いてくれるものも。そんなもの、今までだって、何処にもいなかった。
本当に? 本当に?
頭をもたげる、ふつふつと湧いてきた疑問。問いかけの声。
(本当だよ、僕は、殺したいなんて)
否定しようとする自分。悪いのは僕、でもこんなつもりじゃなかった。
――それならどうして、彼らは殺されたの。
いつかきっと上手くいくと思っていた。幸せって感じられる日が来ると思っていた。
だから、ずっと悪い感情を押し殺してきたんだよ。
わかっている。すべてが根本から、狂っていたんだ。
(何で、僕はここに生きているの)
死んでしまいたい。血にまみれた服も、繰り返し脳裏に映し出されるヴィジョンも、すべて捨てて逃げ出したい。
許されるのか? 果たして、それは。
自らの死が、償いになり得るのか? 自分はそんなにも価値のある人間なのだろうか?
自問。――ラウィスは俯き、頭を振った。
(今はまだ生きて、償わなくちゃいけないんだ……)
罪を背負って生き、償いを探さなくてはいけない。死ぬのは、逃避に過ぎないだろう。それに死のうとしたところで、もうひとりの自分がそれを許してくれるはずもない。
常につきまとう、重く苦しい罪悪感。それは当然の報いだ。
(ごめんなさい)
涙がまた、頬を伝っていった。
(ごめんなさい……父さん、皆)
罪深きこの自分を、許してくれなんて、とても言えない。
(ごめんなさい……)
もう戻れない。血のつながった家族は、この世から消えてしまった。
(母さん)
運命は、再び回り始めてしまった。
もう、止まらない。
最後の時まで。
歴史は、いずれ繰り返す。
かつて地界を統治し、良き方向へと導いていた導者、レフィカは、再び今生に生まれ変わり、決戦の時を待つ。
今生での彼の名を、ラウィス・スリンクスという。
今は己の運命を知らずとも、いずれ、必ず――。
選ばれし者は、その身に余るほどの大きなる因果を負い、
この世界に生まれてきた。
いつしか理解する時が来るだろう。
自分が、真に何者であるかが。
END
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