創作をするにあたり、モチベーションを保つことを目的として。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
一方のレニウムは、自室の中で立ったまま悲しみに暮れていた。
「突然やってきたアンナに突然軟禁されてしまうなんて……私が一体何をしたというんだろう……」
そして右手でそっと涙を拭う仕草までつけてみる。もちろん嘘泣きだ。
「……もしかして、アレかな?」
はたと嘘泣きを止め、今度は口元に手をあてて何かを思い出そうとしている。
「いや、それとも……アッチかな? もしくはコッチ?」
目を閉じて、うーんと考えた末、
「いやいや、この間イングリットに作ってあげた友達ロボットの“クマえもん”が羨ましかったのかな?」
その考えが気に入ったらしく、レニウムはふっと顔をほころばせた。
「きっとそうだ、アンナもあれが欲しかったんだ。イングリットもあんなに喜んでいたし……結局壊しちゃったけど。ふふ、イングリットはちょっと乱暴者さんだから、今度はもっと頑丈に作ってあげなくちゃ」
にこにこしつつ独りぶつくさ呟きながら、レニウムは回想を始める。
――そう、あれは数日前のことだった。
アンナが遊びに来る時以外はいつもひとりでいるイングリットに友達を作ってあげたいと思い立ったレニウムは、食事もとらず一日中研究室にこもって一体のロボットを完成させたのだった。その名も“クマえもん”。愛らしいクマのぬいぐるみに意志を与え、自由に動き回れるように様々なモーターやら歯車やらを内部に取り付け、おまけに腹部に“異次元ポケット”なる高性能の収納ポケットをくっつけた、自称『近年稀にみる大傑作』。
早速、警戒心むき出しのイングリットを丸め込み無理矢理押し切って、客室に放り込んでクマえもんと二人きりにしてみた。ついでに「あとはお若いふたりでごゆっくり」なんていう意味不明な言葉と笑顔を残して。
それから数分後、イングリットの「ぎゃー!!」という悲鳴が聞こえたので、レニウムは慌てて駆けつけたのだ。そして部屋の扉を開けると、イングリットがクマえもんの異次元ポケットに頭から収納されかけていた。
それを見たレニウムの一言は、これである。
「楽しそうだなあ……。もうっ、ずるいぞ! やっぱりわたしも仲間に入れておくれよイングリット!」
その言葉に激怒したイングリットは、その怒りの力でポケットから脱出し、即座にクマえもんを破壊。そしてレニウムに何考えてんだこのイカれ発明家、などの罵声を浴びせかけたが、当の本人はまったく聞き耳を持ってはいなかった。いつものことだが。
――つまり、そういうことがあったわけだ。
回想を終え、レニウムは大きく頷いた。
「うん、アンナにも作ってあげよう。アンナは女の子だからウサギさんがいいかな? ついでにイングリットにもクマえもん二号を……。よし、そうと決めたら早速」
言いながら、いそいそと扉を開けて廊下に出ていくレニウム。そしてあっさり、モップを使って廊下のワックス掛けをしているアンナに発見される。
「レニィ!」
「やあアンナ。ウサえもんが欲しいなら、こんなところに軟禁しないで言ってくれたらいいのに」
「はあっ? ウサえもん?」
にこやかに訳の分からないことを言い出すレニウムに、アンナは思わず返した。しかもすでに、新しいネーミングまで決定している。
「ちょっと待っててね、明日の夜までには作ってあげるから。アンナには特別に、ポケットふたつ着けちゃうよ」
言って、そのままスタスタと研究室に向かおうとする。研究室にはリビングを抜けた先にある。リビングにはレニウムの誕生日パーティーの為のご馳走用にたんまりと食材が積まれている。つまり、それを見られたらレニウムに『美味しい手料理で彼のハートをどっきゅん狙い撃ち☆』作戦がばれてしまうかもしれない。いや、ばれる。絶対にばれるに決まっている。
「だっ、だめーーーー!!!」
ばちこーん、と、良い音がした。一瞬の間に思い詰めたアンナが、モップで後ろから思いきりレニウムの頭を殴ったのだ。そして崩れ落ちるレニウムの身体。青ざめるアンナの顔。
「きゃー! レニィ!」
慌ててモップを放り出して駆け寄り、目を回して気絶しているレニウムの上半身を起こす。
「しっかりして、死んじゃだめ、誰がこんなことを! あたしだけど、ごめんなさいレニィ!」
べちべちべちと高速で頬を叩かれて、レニウムはうっすらと目を開けた。
「う、うーん……」
「良かった、気がついたのね!」
「あれ……今、モップで殴られて……?」
朦朧としたその言葉にぎくっと身をこわばらせるアンナだったが、すぐにしれっとした顔で、
「なんのこと? アンナぜーんぜんっ、わからない!」
そしてとびっきりの笑顔をレニウムに向けて、
「それよりほら、部屋から出てきちゃダメだって言ったじゃない! ね、早く戻って。早く早く!」
後ろめたさから急にべたべたしてきたアンナ立たされて、そのまま自室に連れ戻されるレニウム。
「じゃあ、今度こそ本当に、あたしが呼ぶまで出てきちゃだめだからねっ」
しっかりと念を押して、無事作戦に気づかれることもなくレニウムを再び軟禁することに成功したアンナは、部屋の扉を閉めたあと、ほっと胸をなで下ろした。
「ふう、危ないところだったわ」
実際危ないところだったのはレニウムのほうだが、もちろんアンナ自身にそんな自覚などない。
「さ、はやく家中ピカピカにして、ご馳走作りに取りかからなくちゃ」
よし、と気合いを入れ直して、アンナは再びワックス掛けを再開した。
ぱたぱたを扉の前から遠ざかるアンナの足音を聞きながら、レニウムは考えていた。
「えーと、さっきまでわたしは一体何をしようとしていたんだっけ?」
しかし後頭部がズキズキするせいなのか何なのか、ちっとも思い出せそうにない。
「はあ、全然だめだ、思い出せない。なんだかとてもナイスアイデアだったような気がするんだけどなあ」
発明家にとって、アイデアこそすべてのものの根元であり最も重大なものである。それが思い出せないとあって、レニウムはがっくりと肩を落とした。
「仕方ない。他のことでもしていれば思い出すかもしれないし。……何をしようかな」
本来ならば家の中をうろうろ歩き回って思い出したいものだが、今日はそうもいかないらしい。代わりに何か良いものはないかと辺りを見渡すが、綺麗好きなレニウムの自室はこざっぱりとしていて、目立って面白そうなものはない。一番目立つものといったら、ベッドの枕元にちょこんと座っている、自作のイングリット人形くらいだろうか。しかもなかなか可愛い。
「うーん……」
軽く唸りながら、試しに机の引き出しを開けてみる。一番上はペンやらレターセットやらが入っていて、めぼしいものはない。真ん中の引き出しには、ファイリングされた書類が入っている。これでもちゃんと仕事はしているようだ。そして三番目、一番下の大きな引き出しには、
「あ」
淡いピンク色の毛糸玉が三つと赤い毛糸玉が二つ、転がっていた。
「そうだ、前は編み物にはまっていたんだっけ。イングリットが家に来てからすっかり忘れていたよ」
言いながら、赤い毛糸玉をひとつ取り出してみる。ふわふわとして柔らかい手触りに、自然と微笑んだ。
「久しぶりに、編んでみようかな」PR
「俺がなにしようが勝手だろ!」
それは非難がましく棘のある声だったが、アンナはあっさりと、
「ふうん、まあ別にいいけど。だって今日はあたしがレニィを手伝うんだから」
「?」
いつもならここで口喧嘩が始まりそうなものなのに、イングリットは少し拍子抜けする。しかしアンナはそんなことなど意に介さずに続けた。
「だからレニィは向こうに座って休んでて。ここの掃除はあたしがやっておくから」
「どうしたんだい、アンナ。そんないきなり……」
「いいから! ほらほら、早く向こうに行ってよおっ」
言いながら、ぐいぐいとレニウムの背中を押してリビングの向かい側にある彼の寝室に押し込もうとする。レニウムは何が何だかわからないという様子で、「え? え?」などとあたふた言っていた。
「心配しないで、あたし掃除だってちゃんとできるわ!」
レニウムを寝室まで連行することに成功したアンナは、なぜか自信満々だ。レニウムはわけがわからない。
「なにも今急いで掃除しなくてもいいんだよ? せっかく遊びに来てくれたんだから、三人でお茶にしようか」
「だめ! 今日はだめなの!」
「だめなの?」
「とにかく、レニィはゆっくりしてて! あたしが呼ぶまで出てきちゃだめなんだらね!」
「……軟禁……?」
バタン、とレニウムの困惑した悲しげな声を遮断するようにして、無情にも扉は閉められた。
「ふう、これでよし」
ため息をひととつついたあと、すぐにアンナはホウキを手にして、まるで何事もなかったかのように掃除を開始する。
「って、おい、勝手になにやってんだよ!」
どうしていいかよくわからず、黙って見ていたイングリットがついに口を開いた。
「あら、まだいたの」
イングリットはその言いぐさにムッとする。
「何しにきたんだよ!」
「何しにって、決まってるじゃない、今日は大切な日なんだから!」
「たいせつ?」
何のことだかわからず、首をかしげる。
「やだ、アンタ知らないの?」
「何がだよ」
なんだか知らない自分が悪いような言い方に、さらにムッとする。しかしどういうことなのかも気になって、おとなしくアンナの説明を待った。そしてアンナは、はあっと大げさなため息をついてみせた後、
「アンタってほんと、バカでしょ? バカでしょ? ねえバカでしょ!?」
「三回も言うなっ!!」
「今日はねえ! ……はっ」
言いかけたところで、突然ばっと背後を振り向く。イングリットもアンナの背後に視線を滑らせると、そこには寝室の扉を少しだけ開けて、そっとふたりの様子を除き見ているレニウムの目玉が、アンナに見つかったということに気づき挙動不審にきょろきょろ動いた。
「だめだったらぁ!」
「いじわるぅ……」
再びアンナの手で扉が閉められると、レニウムが恨めしげな声を発した。恐らく、仲間はずれにされてかなり寂しがっているのだろう。
そして再びレニウムに覗き見されることを懸念したアンナは、イングリットを外に連れ出した。残念ながら仲間はずれはまだ終わらない。
「さっきの続きだけど、今日は、今日はね……」
「もったいぶるなよっ!」
イングリットがイライラを声を荒げると、アンナはコホンとわざとらしい咳払いをして、
「今日は、レニィの誕生日なのッ!!」
「!?」
(たんじょうび!?)
「だから、今日はレニィにゆっくりしてもらう日にするの。邪魔しないでよね」
「……たんじょうびって、なんだ!?」
「はあ?」
思わぬことを言われて、アンナは思わず間の抜けた声を返してしまった。何を言っているのだ、この少年は。本気で聞いているのか? ーーその表情を観察してみるが、どうも本当に誕生日を知らないらしい。
「信じらんない、いくら世間知らずだからって」
はあ、と片手て頭を抱える少女の姿を見ても、どうしてそんなリアクションをとられているのかなどまったくわからないイングリットは、じっとアンナの答えを待っていた。
「誕生日っていうのはね、生まれた日のことよ」
そう言われて、やっとピンときた。
(生まれた日……製造日のことか?)
「だからお祝いするの。わかった?」
「おいわい……」
「わかったら、あたしの邪魔はしないでよね。掃除を終わらせて、料理も作らなきゃいけないんだから忙しいの。レニィをびっくりさせて、喜ばせるんだから」
そう言い終わると、さっさと扉を閉められてしまった。体よく追い出された形だが、イングリットは『たんじょうび』が気になってそれにも気づかない。
「たんじょうび……おいわい……」
(よろこぶ……)
少し無言で何かを考えてから、イングリットは一度大きくうなずいて何かを決意し、そしてたっと駆け出した。家を背にして走る。町の方へ。
レニウムのハッピーバースデイ!
「フンフンフーン♪」
暖かく、そして爽やかに晴れた今日のような日は、絶好の掃除日和だ。町外れに住む青年発明家レニウムは、左右にポケットのついたいつもの白衣を着て、長い黒髪をひとつに束ね白い三角布を頭に被り、でたらめな鼻歌を歌いながら上機嫌でホウキを動かしていた。今はリビングの掃除を終え、玄関の掃除に取りかかり始めたところである。それなりに広い家は掃除も大変だが、レニウムはいつもこまめに綺麗にしている。こういったことは嫌いではない、というかむしろ好きだ。
そんなレニウムを、空気の入れ換えのために開け放してあるリビングのドアの向こうから、じぃっと見つめるイングリットの姿がある。
「………」
イングリットは何か言いたげな顔で、もじもじ。その姿は何だかストーカーにも見えるほどだ。
「フフフンフン♪」
しかしレニウムはイングリットのガン見にも気づかないほど掃き掃除に熱中している。
「………」
もじもじもじ。
(うう……)
イングリットはもじもじしながら、頭の中で妄想していた。
レニウム「ああ、そうじはたいへんだな。でもがんばらなくちゃ、きれいなおうちのためだもの……」
イングリット「おれがてつだってやるぞレニウム!」
レニウム「えっ、ほんとうかいイングリット!」
イングリット「ほんとうだ! うれしいだろう!」
レニウム「ありがとう! すごくすごくうれしいよ! イングリットさいこう!」
「………」
もじもじ、どきどき。でも今の妄想でちょっと頬が赤い。妄想の中でほめられて、どうやら勝手に嬉しくなったようだ。が、現実はどうやって切り出したらいいものかわからない。しかし声をかけなければ何も始まらないのは、イングリットだってわかっている。
(……よし、言うぞ……!)
ようやく決意を固めたらしい。ぎこちなさすぎる動作で一歩を踏みだし、ぱくっと口を開く。決意を固めすぎて血走った目が怖いのは、ご愛嬌だ。
「レニウ」
しかし最後のム、を言い終わる前に、玄関の扉がコンコンとノックされた。
「おや?」
レニウムはホウキを動かす手を止め、ドアノブに手をかける。
「あ……」
出鼻を挫かれたイングリットは、踏み出した一歩をどうしていいかわからなくなり、そのまま固まってしまった。
「はーい」
ガチャ、と扉を開けると、開ききらないうちに玄関に滑り込んできた人影。それはそのままぼすっと、レニウムにタックルするようにして抱きついた。
「逢いたかったわレニィ!」
「!?」
聞き覚えのある高い声に、思わずイングリットは、げっとなる。――知っているぞ、このわざとらしい甘い声と台詞は……
「やあ、こんにちはアンナ」
アンナを抱きとめたままでレニウムが言った。アンナはぱっと顔を上げ、満面の笑みときらきらした瞳で、
「10日ぶりよ! レニィに逢えなくて寂しかったんだから」
「またお父様の仕事を手伝っていたのかい?」
「そうよ、パパの馬車に乗って王都まで行ってたの」
アンナは貿易商で町一番の大金持ちの一人娘。猫のようなアーモンド型の目に、くるくるとカールした薄茶色の髪をツインテールにして、赤いメイド服のようなデザインのドレスを着ている外見からはお嬢様らしさはあまり感じられないが、立ち居振る舞いからはどことなく気品を感じさせる少女だ。その勝ち気で真っ直ぐな性格から、イングリットにもずけずけと物を言ってよく口喧嘩をしているが、レニウムはふたりが仲良しなのだと解釈している。
「レニィの発明品も持っていったらすごく好評で……って、あら?」
アンナがレニウムから身体を離し、はたと視線を投げた先には立ち尽くすイングリットの姿。目が合うと、イングリットはぷいっと顔をそむけてしまった。
「なにしてんのよアンタ、そんなとこで」
「おや、イングリット?」
二人同時に注目され、イングリットはなんだかとてもバツが悪い。結局、手伝うとも言いそびれてしまったし。
「なんでもない」
そっぽを向いたままでいるイングリットに、アンナは呆れた口調で言った。
「なぁにが『なんでもない』よ。ヒマしてるなら、ちょっとはレニィを手伝ったらどうなの」
「!」
むっとして、イングリットはアンナを睨みつけた。今、手伝うって言おうとしてたのに。それをアンナが邪魔したのに。――とは思っても、それを口に出せるはずもなく。
というか。はじめます!
えーと、一応断りを入れておきますが、これはゼロの作品、『カーニバル』の二次創作です。
これから載せる小説の内容は完全オリジナルですが、カーニバル自体はゼロのつくった物語です。
今回のパロディ小説のタイトルは、
『レニウムのハッピーバースデイ!』です。
レニウムはカーニバルの主人公のひとり、イングリットのご主人様。
まあ、ご主人様っていう感じもしませんが(笑)
このレニウム、実はあたしが作ったキャラでゼロに使っていただけたものなので、
生みの親としての愛情をたっぷり詰め込んでみました(笑)
もうひとり、アンナっていう女の子も登場しますが、この子もあたしが勝手に作りました。
確かモジ子ちゃんには投書したことあったと思うけど。。でも忘れてます。あたしが。
アンナっていう名前だったかもさだかではないという。。。てへ。
ということで、ゆるーい小説ではありますがお楽しみいただけたら幸いです。
それなりに長さのある話なので、ゆっくりとお付き合いくださいませ。
えーと、一応断りを入れておきますが、これはゼロの作品、『カーニバル』の二次創作です。
これから載せる小説の内容は完全オリジナルですが、カーニバル自体はゼロのつくった物語です。
今回のパロディ小説のタイトルは、
『レニウムのハッピーバースデイ!』です。
レニウムはカーニバルの主人公のひとり、イングリットのご主人様。
まあ、ご主人様っていう感じもしませんが(笑)
このレニウム、実はあたしが作ったキャラでゼロに使っていただけたものなので、
生みの親としての愛情をたっぷり詰め込んでみました(笑)
もうひとり、アンナっていう女の子も登場しますが、この子もあたしが勝手に作りました。
確かモジ子ちゃんには投書したことあったと思うけど。。でも忘れてます。あたしが。
アンナっていう名前だったかもさだかではないという。。。てへ。
ということで、ゆるーい小説ではありますがお楽しみいただけたら幸いです。
それなりに長さのある話なので、ゆっくりとお付き合いくださいませ。
[1]
[2]